ヒーローとシンパシー

5ヶ月前に書けよシリーズ。


イマジンは「他者」であるからこそ腐女子にウけたというのをこないだ書いたけど、それならおまえはどういうキャラなら自分を重ねて観られるか、好きになれるかと言われた場合、ヒーローものだとやっぱり勧善懲悪がはっきりしている奴が良い。
以前書いたけど、ヒーローものの魅力の一つに、「悪い悪い悪い奴が、強いヒーローがやっつけてくれるところ」というのがあると思うのだ。
観てて「こいつは許せねえ!」と自分が思ったときに、ドラマの中のヒーローも一緒に怒り、戦って勝利する、そういうところで共感し一体化できるのがヒーローものの楽しみなのだ。


電王がイマイチだったとこの一つに、「敵側の描写不足」というのがあって、基本的に敵のイマジンてそんなに悪いことしていない。過去に行ってビルとか壊してるジャン!と言われそうだけど、ビルとか壊れて困ってる人、泣いてる人の描写がない以上、それは「悪人ですよ」という記号的な描写以上の意味を持たない。そういう連中を倒しても、イマイチスカッとしないのだ。
イマジンの「悪」とはなんなのか、毎回ヒーローに殺されねばならないほどの理由とはなんなのか?


電王の話のフォーマットって、毎回バカ(契約者)がだまされて、電王はだました奴(イマジン)をやっつける話であって、極端な話、バカに同情出来なければ全然イマジンを憎く思わないのだ。バカでないにしろ、2週でバイバイのゲストキャラに思い入れしろよと言われても、何かしら感情移入のフックになる要素がない限りなかなか難しい。ゲストはたいていボケ役だしね。
そして敵役であるはずのイマジン達は、結局カイに操られてるだけの自我を持たない哀れな道具に過ぎない。そんな連中をヒーローは嬉々として殺していいのか?
どハデな器物破損よりも、一人の泣いてる女の子の不幸をきちんと描くほうがドラマとしては盛り上がるのは当然だ。(どハデな器物破損がウリの作品ならそれでも良いけど)


劇場版の電キバは電王の悪いとこがモロに出てる(良い所もモロに出てるのだろう……)と思うのだけど、ネガタロスやヤクザの親分はなにが「悪」だったのか?ただの「怖そうな人たち」という程度の描写しかない。きっと国会に行ったのも、毒餃子に対する日本政府の対応に不満があって抗議に行っただけに違いないよ!
リュウタロスが顔が悪人っぽい人は逮捕!っていうのはギャグですむかもしれないけど、カッコがバケモノっぽい奴は死ね!っていうのはちょっとね。
そのへんのセンスは「ヒーローと正義」で、怪人は「異界」だから許されないと書いちゃう白倉Pだからなのかもしれないけど。でも井上脚本だと異界だから、ではなく悪人だから報われず死んでるんだよな。それがたとえ正義側のライダーに変身する者であっても。


「悪」を描きこんでいくと、楽しいライダーというテーマから外れてしまうという懸念があるのかもしれないけど、それだったら完全にコメディ寄りにしたほうが(カーレンジャー並に?)しっくり来るし、割り切って観られたのになあと思う。
イマジンが好きってのと、仮面ライダーが好きってのは全然別だしネ。


付記1:ゲキレンジャー終盤の話。リンが「俺の人生は操られたものだったのか……」と絶望するけど、結局リンに共感出来そうな描写がないので、視聴者にはリンには同情できず、ロンの悪っぷりはピンと来ない。
付記2:電王でモヤモヤしてる一方、その後にやってるプリキュア5のほうが悪者はちゃんと悪者として描写されて、ストレートなヒーローものになってたりして。男の子向け番組を書いてる女性脚本家と、女の子向け番組を書いてる男性脚本家……。
付記3:個人的に「悪」に立ち向かうヒーローの描写で一番グッと来たのは、特撮じゃないけどワンピースのアーロンパーク編。梁田清之の悪者ぶりも良いけど、虐げられる岡村明美の鬼気迫る演技がすごい!
付記4:共感で思い出したけど、エロマンガエロゲーなんかは、ユーザーの男性は描かれてる女性に感情移入してハァハァするのだけど(女性から見ればそうは思えないかもしれないが!)、自分はそういうのはイマイチ。だからマゾゲーが好きなのかもしれんね……。