電王と腐女子

すんーごい今更ながら。
電王がイマイチなのはともかく、それがなんで腐女子層にウケたかというのは気になってたんで自分なりにいろいろ考えたんですね。
アニメイトで2回もフェアやったり、写真集や関連商品が売れてたり、オタク大賞腐女子部門で大賞とってたり……でも自分にはさっぱりわからない。
特撮ファンが喜ぶファクターとして、『特撮だから』『仮面ライダーだから』っていう要素があるけど、ビジュアル的にはグッとこなかったし、仮面ライダーだから*1、というこだわりで観てたわけでもないし。
だもんでアンチョコを読みながら考えました。


なにはともあれ電王はツールとして優秀だった。それはつまり、イマジンが徹底してキャラとして描かれているせいだと思う。


まず子供向けとして。子供にとって大事なのは、『なりきり』の要素。
各イマジンに明確な決めセリフ、決めポーズがあったことで、「なりきり」が容易だったこと。良きにしろ悪しきにしろTVに出るキャラは子供にとってロールモデルであり、それに簡単に『なれる』というのは嬉しいことなのだ。「変身!」の決めワードのない、響鬼ごっこのなんとやりにくいこと!
シナリオを理解しない子供にとってはなによりキャラクターが全てだし、なりきりは子供にとっては大事な要素なのですね。


そして腐女子向けとして。イマジンは過去(キャラクターとしての背景)をもたず(つまり自由に妄想をふくらませることができる)、人間離れした容姿でカワイイ芝居をし、そのくせ人気声優の声でしゃべる、まさに『2.8次元』の存在だ。これを腐女子の理想といわずなんというのか!


ここで大事なのは「人間でない」「現実ばなれした」という要素。「関係性」こそが萌え要素腐女子にとっては、人間離れしたビジュアルの着ぐるみのほうが妄想が膨らむ。イケメンはたしかに大事だけど所詮は人間。キグルミのほうがより「関係」を純化して妄想出来るのだ。ついでに言えば、異性の声を聞いたときのの性的興奮度は女性のほうが大きいとか。
イマジンとはよく言ったものだ。*2過去のある、人間の演じる「キャラクター」ではなく、まさに純化した「キャラ」がウリなのだ。キグルミであることで、どんなにクサいセリフを吐いても、決めポーズをしても、許されてしまうのはオイシイ。
脚本を考えるときに、「こいつはどんな奴なんだろう……」とまず考える井上敏樹が最後まで登板しなかったのも、当たり前といえば当たり前なのかもしれない。


ぶっちゃけ電王は「ドラマ」としてではなく、「キャラ」がウケたと言って良いと思う。キャラはブレず(成長もしない)し、話は連続性に拘ってるわけでもなく、ツジツマ合わせはしてるけどとりたてて魅力があるわけでもないというのは、勝手に遊べというのと同じだ。
キャラ頼みは商売としては悪いことじゃないし、子供向け番組として正しいのだけど、「なりキッズ」にもなれない、腐女子回路も持たないいい年の男オタとしてはやっぱりこう……ねえ。子供番組の枠の中に収まりきれずに溢れ出た制作者の執念(?)をひねくりまわして楽しむ、というオタク的な楽しみ方は結局できずじまい。
白倉Pのインタビューを読むと、電王は裏ではハードな設定が……と言ってるけど、カブト後半と同じくキャラの人気を見込んでるのは間違いないと思う。


ついでに言えば主人公のはずの野上良太郎は最弱ライダーというふれこみだけど、実は全然そんなこともなく天道総司なみに完璧くんだと思う。運が悪い、というのは人間的な欠点としては描かれておらず、本人がそれをコンプレックスとも感じていないのだから単なるギャグネタ扱いだ。不幸という要素すら完璧人間を構成するファクターだというのかッ!?
良太郎は少年マンガ的な主人公というよりも、個性的な脇役に翻弄されるBLモノの主人公キャラそのままだし、同性としては自分を重ねにくいキャラクターだったというのが正直なところ。
あと物足りない要素としてはパワーゲームと世界観萌えの要素があるけどそれはまたあとで。
あっ、あと俺まるっきり鉄オタじゃないのだ。


そんな感じで電王はイマイチだったです。ショー通いも途中でやめてしまったしなあ。
ちなみにこれがオタク大賞腐女子部門をとったときの白倉Pのコメント。倉田真澄というのはオタク大賞に審査員として呼ばれたライターさんですよ。しらたろすー。


ちなみに腐女子思考の参考に読んだのは
杉浦由美子の「オタク女子研究」と「腐女子化する世界」だったりして。
どうせ「となりの801ちゃん」も「今日の早川さん」も「はっぴー腐女子」もうちらはこうじゃないよ!って言うに決まってるんだから!

*1:人によっていろいろ定義がありそうだけどここはパス。NEXTはダメダメだった……

*2:イマジンは名前通りイメージの魔神(Image+Jinny)……だったと思う。うろ覚え