出版評論〜Live版「見たい聞きたい出版業界最前線!」

5部構成はムリだろ……

http://www.loft-prj.co.jp/PLUSONE/index.html


久しぶりにロフトプラスワンに。
予定では5部構成だったけど、ゲストが変更してたりオタキング岡田が遅れたりでなんだかんだで3部構成に変更。


第1部のゲストは宝島社「ぼくたちの好きな〜」シリーズの創始者浅野智明氏。
「100万部ホルダーに聞け! 『ぼくたちの好きなガンダム』『たまごっち本』製作秘話」


ぼくガンの頃はガンダム本が濃い本濃い本*1へと先鋭化してて、ブラウン管のこちら側からの本を作りたくて作ったとのこと。80年代ゲーム本も同じ理由だそうな。「ぼくの好きな〜」でも売れたのはこの2シリーズで、「わたしたちの好きなフランダースの犬」は大コケしたそうな。
ぼくガンは初日から初刷の25%が売れて即日重版が決まったくらいのヒットだけど、印税契約をしてなかったせいで、売れても4ヶ月で80万の月給しかもらえなかったらしいぞ。
あとたまごっち本が売れたのは参入が早かったことと、おまけのシールが多いからだそうな。
版権ものとしてムシキングの次に来ると言われてる恐竜ものの便乗本もやりたいけど、小学館パワーが強くてなかなか難しいとのこと。ブランド力とそれを支える体勢がやはり全然違うそうな。


ところで付録話でファッション雑誌の「ニコラ」の話題が出たのだけど、資料として買って付録を見て浅野氏が腰を抜かしたという話題が。
http://www.nicola.jp/guide/index.html
これが時代か!


第2部ではゲストに「もえたん」の編集長三才ブックスの村中宣彦氏がプラス。
「萌え本バブルと萌え本のこれから」


萌え本バブルといっても特に売れてる、というわけではなく、最近では「萌え」がつくと取次業者が渋い顔をするらしい。「もえるるぶ」をすごくうらやましがってたのが印象的。他の社でやらないのは、東京ローカルの出版物はパイが小さすぎるから。もえるるぶが北海道でも売ってるのは、ここでもやはりJTBのブランド力が関係しているみたい。
結局もえたんも話題にはなったけど、増刷しても売れてる本屋にまわらずベストセラー倒産*2みたくなりそうだったという話とか。
宝島社が年末に年賀状ムックを出して、5月ころにその赤字を埋めるための本を出してるという話もなるほどと思った。
結局あまり萌え業界の話にはならず、出版業界の不景気な話をしていたような感じ。二兎を狙っても、結局ファン層が重なったところの人しか買わないということになるらしい。


第3部はいよいよ岡田斗司夫氏とイーグルパブリッシングの代表藤森英明氏が登場。
「ベストセラーの作り方を考える」


登場していきなり「ベストセラーは講談社に入ればできる」とカマす岡田氏。
今回のキモの第3部の趣旨は、
講談社の出版力を10として、宝島の編集者浅野氏が7、三才ブックスの編集長村中氏を5、イーグルパブリッシング代表藤森氏を3と申告してもらい、それぞれの企画で岡田氏の本を出版、一番を決める、という企画。出版の鉄人みたいな感じで、岡田氏が大ノリ。


創価本を出せばベストセラーとか、付録をつけて売れば行けるとかプチクリハローワーク本とか墓石本とかいろいろアイデアが出る中、規模が大きくなれば自転車操業的にならざるを得ない出版業界の話が出てきてなかなか興味深かった。講談社は編集者が好きな作家に好きな部数(取次の顔色をうかがわなくていいということ)でオファーできちゃうそうで、そこからして全然違うというのはなかなか一般人にはわからない。というよりこちらのイメージが一般的、というところにギャップがあるのだな。
普段本を買わない人に買ってもらうことがベストセラーの条件だけど、今の家庭は年に2冊しか買わないという話も。ベストセラーは売りかたよりも「現象」だけど、それを狙ってやるのはなかなか難しい、2ちゃんねるも最近はそれほどでもなく、やはりブログとかに情報源がシフトしてるそうな。
パブリシティの話は他でも出てて、バラエティっぽいテレビ番組や書評に出てもあまり効果ないという話も。新聞の下面が本の広告なのは、新聞の伝統だからだそうですよ。
出版業界も2007年問題の離婚本ブームを当て込んでいるらしいけど、買って帰れないのでなかなか難しいらしいぞ。


結局
・宝島社「岡田斗司夫憲法本」
三才ブックス王立科学博物館・限定フィギュア付きムック」
・イーグル〜「岡田斗司夫の青春時代回想」
というラインで検討されるらしい。でもなんか変わりそうな感じ。


この企画、6月にまたイベントをやって進行をまた報告するそうな。『創』あたりで連載になるかも、とのこと。ちょうど3者の社内での力関係と規模が分散してるところがミソだなあ。なかなか面白そう。
3人とも本を書く人とじっくり向き合って、その人が作りたい本を一緒に作るのが理想だけど、売り上げを考えるとなかなかそうもいかない、と愚痴っていたのが印象的。商売って大変だよな。



ところで来月11日は東映の伝説のPD平山亨のトークイベント第2回目がついに開催されるぞ!これは行かないとネ!
http://d.hatena.ne.jp/kasindou/20041029#p1

*1:ガンダム・オフィシャルズとか。万引きされまくったらしい

*2:印刷のための資金は即払わなければならないけど、売り上げの回収が半年後になるためその間は全て持ち出しになるために倒産というパターン