ファウスト vol.5 (講談社 Mook)作者: 上遠野浩平,佐藤俊樹,元長柾木,西島大介,西尾維新,北山猛邦,竜騎士07,奈須きのこ,東浩紀,渡辺浩弐出版社/メーカー: 講談社発売日: 2005/05/17メディア: ムック購入: 3人 クリック: 33回この商品を含むブログ (146件) を見る

なぜ今更この本を紹介するかというと、枕木憂士氏のエッセイでいわゆるツッコミの無意味さについて語られていたからなのだ。
高校の頃からのおたく趣味でダメゾンビ映画をこきおろして楽しんでいた筆者と友人のK君。社会人になったK君が筆者に女の子と話が盛り上がらない、と相談する。それに対して筆者が、こう答えようとする。ちょっと長いけど引用。

彼女はきっと普通の子なのだろうな。おたく的なK君は、普通の子に恋してしまったのだな。僕はそう思いました。これまで映画を見るとき、斜めに見て楽しんでいたK君は、本当に良い映画でも良い部分を口にして称賛するという会話の運び方ができないのだろうな。きっとこれまで通り、僕とやったように、ダメな部分を指摘して彼女の笑いを必死にとろうとしているのだろうな。
でもK君、それではいけないよ。僕はあれからいろいろ考えて、ある結論に至ったんだ。何かを否定して笑うのは、楽しいけれど何も産まないんだよ。その場かぎりで笑いが巻き起こるけど、何も残っていかないんだ。否定は死につながる。だからいいものを見たときには、すごくいい、と口にするんだ。なぜなら普通の女の子は、いいものを見たとき、チョーいい!と叫ぶでしょう。笑いなんてとる必要はないんだよ。あれが駄目、これも駄目、という負の方向の話題ではなくて、あれが好き、これも好き、という肯定的な方向の話題を口にするんだよ。ただ一緒になってチョーいいと口にするんだよ。その方が大勢の人を幸福にするんだということを、きみは学ぶ必要があるんだよ。

この号は他にも面白い記事や小説も載ってたのだけど、このエッセイ(創作?)が一番心に沁みた。
実際になんと筆者が答えたのかは本を読んでみてくださいな。前半3分の1くらいのとこに載ってるよ。*1


こういうのを考えながら、一般的なオタクイメージを作った感のある電車男を観ると、果たして電車男は一般的なオタクか?オタクとは何か?という問題が浮上してくる。

hazama-hazamaさんはここのダラダラ文と違ってテーマに沿ってブログを書いてるけど、非モテとかオタクとかのカテゴライズは本当に意味があるのか?とつい考えてしまう。まず何をもって定義するか?というのが論文の書き方ではないか。
まあそんなに厳密なものじゃなく、シンプルな思考実験なのかもしれないけどネ。

*1:ファウストはページ番号を振ってないのだけどやっぱり不便だ!