それがVガンダムだ ササキバラ・ゴウ

ISBN:4877770542


キッズステーションでのVガン放映終了にあわせて読了。

秀逸なエピソードガイドとそれをめぐるキーワード解説は、自分が持っていた不満や魅力をうまく言語化してくれていて非常な好印象。

今までのガンダムの文脈にはまったく沿わないキャラクター、メカニックをジャンクと表現し、しかしそれが現実に近いと喝破する。その馬鹿馬鹿しさで人が死んでいく現実を書こうとするVガンダムはその意味で一番リアルであるという氏の文章は、他にも読んでいて刺激的な部分が多い。
ガンダムを知っている人ばかりでなく、知らない人にもアニメ評論のやり方として読んでも損はない。


ところが後半の富野監督へのインタビューではそれを読んだ富野監督から真っ向から「この作品は見る必要がありません」と否定されてしまう。アニメのガイドブックとしては異例の内容。DVDボックスの帯にも書かれているがいかに監督が苦しい状況でこの作品を作っていたかが良く判る。

分裂症寸前を自覚して生きようとしたら、
カラッポの理が走る。カラッポの知が走る。
それがVガンだ。


サンライズバンダイに売り渡されることが決まっていてそれを知らされずに作っている現実。作品と商品との狭間で苦しむ監督の姿が色濃くフィルムに出てしまった作品として、監督自身が痛烈に批判し、否定する様は、監督の実直さを感じさせる。

これに限らない話、エクスキューズを与えるつもりはないけど今現在つまらんと思って観てる作品があるとすれば、その責任をただ監督や脚本家にぶつける愚かさは、ファンとしては考えてほしいところだ。

本当に作者が面白いと思ってるのか?という作品が、実際作り手が一番その問題について自覚している不幸は現場に行かないとわからないことかもしれないけど。

『体感を越えて「理」を働かせたことの悲劇が、見事に映像化されている。そのような悲劇を、さまざまに戯画化してみせている。作り手の意図がどうだったかは、わからない。しかし出来上がったものは、そういうものとして強い力を発揮している。』
『「Vガンダム」は富野由悠季監督の最高傑作である』

ガンダムを好きな人がこれと同じ感想を持っているかはわからないけれど、個人的には10年経って得心のいく評価をされた気がする。

ちょっと高いけどオススメ。


シャア専用ポータルにインタビューが。
http://char-custom.net/data/2004/01/16.html


個人的な話だけど、この「宇宙世紀にトドメをさしたガンダム」と「最もガンダムらしくないガンダム」を両方同時に視聴できる環境が揃ったのは僥倖というしかない。

ちなみに今日の∀は宇宙に出たミリシャが叛乱する話。つなぎの話と見せかけてキャラ立てやシャワーシーンといった見せ場(笑)、∀らしいユーモアのあるオチやキャラクターの隠された思いなど見どころ一杯。
大河内一楼氏がキングゲイナーでメインを張ったのも納得。

明日からは「富野監督以外が作った一番当たったガンダム」が放映されるので今度はちゃんと見る予定。


ぼんやりと思ってるけど女性受けする作品というのは、人と人との関係性に対しての人気だと思うので今度はそれに気をつけてみてみよう。
男目線だとロボ戦が同じとか伏線ぐちゃぐちゃとかそういう評価だけで終わってしまうしそれじゃ芸がないしね。