放送禁止歌 森達也

(ISBN:4759254102)
本文中で出てる歌の大半は聴いたこともないのだけど。


放送にのせられない歌が、放送にのらない理由が実は誰もわかっていなかったという導入からゾクゾク来る。いままで自分達が基準としていたものがいかにあやふやなものだったのか…。メディアの責任とは。
スリリングな導入からデーブ・スペクター氏との対談。アメリカにおける放送禁止のガイドラインについて。ポリティカリーコレクトの問題。黒人差別の問題。移民国家アメリカと比べて日本のそれはレベルの低いところで止まっている。
そして最終章の同和問題へと話が広がってゆく。変遷を続ける竹田の子守歌のもともとの意味とは。関係者が黙して語ろうとしない真実は。そして放送禁止歌とはなんなのか…。


映像作家とは思えない巧みな構成で一気に読ませる。メディアの無責任体質・言葉狩りの問題と差別問題という二つの問題が歌を通して見えてくるのはわかりやすく、実際に歌を聴いたことのある人にとってはより強い印象を与えるかもしれない。


肝心なのは氏の他の著作でたびたび語られてる通り「自分の頭で考えること」だ。差別なんてのはちゃんと考えればどうって事ないことばかりのように思える。
もっとも自分は東京より西に住んだことのない「東側」の人間なので関西のほうの感覚はちゃんと理解できてないのかもしれないけど。
前も書いた事あるけど先祖の恨みごとを子供に教えようとする連中は心底軽蔑する。寝た子を起こすなというのは本当に差別される人々のためを思って言ってるのか?ゴネ得の人権ゴロは生きてる値打ちもないね…。
規制の本質が思いやりの勘違いなら、ちゃんと理解し合えればわかりあう余地があるはず。しんどいだろうけど。


文庫版(ISBN:4334782256)も出て手に入れやすくなったのでご用とお急ぎでないかたは一読の価値ありです。