仮面ライダー THE FIRST

今回はバレアリで。観てない人は観てからのほうが。







ずばりオレ評価としてはイマイチ。
たぶんあのブチリファインのライダースーツの写真を見て、公開を胸踊らせて待ってた「仮面ライダー」としての映画を求めていたファンはそういう評価をせざるをえないのではないか。


明快な理由を考えてみると、、ショッカーの描写があまりにも薄いせいだと思う。というかショッカーの存在自体がなんだかよくわからない。
社会を裏から操るのがショッカーの恐怖、とはいうものの、現代現実社会でも十分あんな団体やあんな国に日本社会は操られているので、せいぜい国会議員が暗殺されたりどこかの会社の機械室を壊したり人をさらったりの描写はなんだかすごく地味なのである。

これじゃブッシュを当選させたのはショッカーの陰謀だ!とか(マイケル・ムーアは真実を知る人なのか?)三木谷がTBSを買おうとしてるのはショッカーの陰謀だ!ということになっちゃいそう。これって怖いのか?
要するに、ショッカーの居る世界なのか、それとも現実世界と地続きなのかがあいまいなままで、そこがかなり不満。個人的には「バットマン」みたく、マンガチックにアップトゥデートしたショッカーが描かれるのかと思ってたんだよね。
まあ実際にテロリストがいつも何処にでも居るという現実は、35年前の現実を越えてしまってるのかもしれないけど。

もっとも、萬画版(by石ノ森)では政府とショッカーが繋がってたり国民総背番号制に反対する描写があったりするので間違いじゃないのだが。テレビ版のほうがはるかに有名なわけで、そういう意味では違和感があるのはしょうがないのかもしれん。


とにかくショッカーの「悪」が明確にわからないせいで、本郷の「美しいものを守る」という決意も、蛇カップルがなぜ美しい心を持ちながらも悪の道を選ばなければいけなかったか?*1という部分も、どうも印象が薄い。これだけでかなりヒーローとしての仮面ライダーが明確になると思うんだけどナ。

秘密で活躍するのが改造人間だとはいえ、もうちょっと違った見せかたが出来たのではないかと思う。姿の見えないテロリストの正体をショッカーだとすると、生々しい描写はいくらでもできるわけで。エキストラをたくさん出そうとしたらお金がかかりそうな気がするけど、見せかたしだいでなんとでもなると思うし。フィクションゆえの限界なのかなあ。
そういえば柳田理科雄の文章で旧テレビ版ショッカーは声明を出さないのでテロリストとしてはオカシイというのがあったけど、今回の映画はまさにそれなのかもしれない。


id:voootさんから指摘があったので訂正。
柳田氏の文章ではなくてこちらの本の円道氏のコラムの記事でした。指摘どうもです。
空想科学論争!


「恋愛」を要素として入れるのは間違ってないし、描写もけっこう好きなんだけど、結局それが「仮面ライダー」としてしっくりいかないのは、結局本郷や一文字が戦うのはあすかがさらわれたからであり(いきなり過ぎな展開にビクーリ。殺そうとしてたはずでは?)世界のために戦ってるわけじゃないんだよな。できることから始めてるという言い方もできるけど、いろいろ物足りない。


良いとこを書くとするとやっぱりデザイン関係か。あとワイヤーワークでのアクションは力を入れてるだけあってけっこういい感じ。バイク上での乱闘シーンなんかはこだわりを感じた。CGを使わない方向はいいけど、使ってたらまた別の可能性もあったのかもしれないなあとも思う。生身のアクションのほうが安っぽくならないので一長一短ではあるけど。
あと最後までスーツ関係は綺麗なままなので、もっとドロドロになるような死闘が観たかった。汚せないのは予算の関係なんだろーな。トホホ。
キャラ立て自体は井上チックで、一文字なんかはオモシロキャラとしてよくできてると思う。

てな感じでかなり食い足りない印象を持った。なんつーかVシネで終わらせるにはもったいないけど、全国公開で大々的に売り出すにはちょっと足りない、そんな感じ。



とはいえ、白倉井上コンビの「仮面ライダー」は実はファイズで完結していて、わざわざそれを繰り返さなかっただけの話かもしれない。

井上:でも、なんでいまさら「友情は美しい」とか言わなきゃならないの?そんなのはみんな一般論として持ってるわけじゃない?なのに、わざわざテレビで言う必要はないわけで。

──それは、見ている人が安心したいからじゃないかと……

白倉:そこがすでにおかしいでしょ。平凡な答えで安心するっていうのは、もともとそういう答えを期待しているってことで、それはすでに観ている側の中で答えが出てるのよ。じゃあ別に観なくたっていいじゃない?と、そういう話。

井上:分かりきったことを書いてもしょうがないって話なんだよな。

http://d.hatena.ne.jp/kasindou/20040403


力が善にも悪にも適用される、しかしそこでなぜ正義を選ぶのか?という仮面ライダーの本質的なテーマは、木場や巧と言った境界線上のオルフェノクの生きかたとして十分に描写されているのだ。以前から書いてるけど555が一番初代のテーマに近いと思うし、そういう意味では白倉井上コンビが仮面ライダーを理解していないとは思わない。
ただ今回はちょっと掘り下げが足りなかったかな……。

*1:手術台に二人並べちゃうくらいでも良かったと思う……けどそれだとシーンとして美しくないかな