ヒーローと正義 白倉伸一郎

寺子屋って…

ISBN:490133042X

白倉PDの本。

と書くとなんだかTV業界の裏話みたいなものを期待するがそういう話題はほとんどなく、民俗学社会学、歴史などの豊富な知識で裏付けされた氏の考える正義について、真摯に語られている。

 結論からいおう。
 わたしたちが「これが正義だ」と漠然と考えているようなものは、<正義>なんて高尚なものでもなんでもなく、ただの感情論や感覚論にひとしい。
 それを如実に体現しているのが、<ヒーローもの>にほかならない。ヒーローという皮膚感覚の産物の、皮膚をはがしていく作業を通じて、わたしたち自信の自己欺瞞もまた、透けて見えてくることになるだろう。
 巷間「正義の不在」なんていうけれど、昨日今日いきなり不在になったわけではなく、はるか昔から正義は不在だったのだ。

序より。

初っぱなから身も蓋もないが…。


本文自体は豊富な文献、歴史からの引用でとても面白くわかりやすく読める。さすがに東大文学部。
「ヒーローは越境するもの」という視点は非常に面白かったのだけど民俗学の考え方ではメジャーなのだろうか。
こういう視点からいろいろな作品を分析するのも面白いなあ。


実際のところ氏の意見に賛成だし、正義論としてのこの本の完成度には文句はないのだけれど、その「正義の不在」をを商業主義のテレビ番組の現場でやるという葛藤にもう少し踏み込んでほしかったところ。

平成ライダーけしからんと言ってるジジババには悪いがやはりその時代にあったものを作らねばならないわけだし。


島本和彦も正義論については「正義=俺」!みたいなふうなセリフで喝破していたなあ。ワンダービットかな。

自分が読んだので知ってるのはこれとか。
ISBN:4480059628




そういえば氏のサイトではWinny問題についてのTVプロデューサーとしての考え方が非常に明快に語られてるのだけど引用してるところは見かけなかった気がする。
現場の人間の意見としてもっと語られてもいい気がするのだけどどうだろう。
http://homepage.mac.com/cron/iblog/index.htm