仮面ライダーファイズ #最終話

予想通りというかまとまってないけど。ヘタにまとまったらまとまったでファイズらしくないのもまた事実。これだけのネタを提供してくれたまま終わるというのはファンにとっては嬉しいことだと思いたい。

2ちゃんねるでは井上叩きスレが乱立してるけど果たしてそんなに悪い脚本だっただろうか?こういう感情的なスレッドより、悪いところも折り込み済みで語ろうとするスレのほうがレベルが高いのは言うまでもない。
http://tv3.2ch.net/test/read.cgi/sfx/1062925560/

脚本の修行をやり直せといってもTVシリーズの構成の志方を書いた入門書があったら読んでみたいものである。それとスポンサーの横やりの入った場合の脚本の直しかたと良い役者を生かす脚本の書きかたも…。


いくつかの雑誌や書籍のインタビューを読むと、仮面ライダー555という作品が人によっては嫌われる要素があるのは理解できる。
たとえば白倉Pの「井上さんは辻褄よりもキャラクターを優先して書ける勇気ある脚本家ですね」という発言や井上敏樹の「俺は正義なんてものにはまったく興味ないんだよ」という発言。叩いてくださいと言わんばかりだ。
たしかに辻褄が合わないところもあるし作品の中で絶対の正義、絶対の悪が描かれることもなかった。

しかしそれを書いたからといって作品の独特の魅力になるかというとそれはまた違う話である。視聴者は話の筋で感動するのではない(感心することはあるかもしれない)し、一行で性格が表現できる主人公が毎回説教することでテーマを語られたことにされては観てる方は辟易してしまう。
だいたい一年通してみたって普通の人は筋なんかよりキャラクターを覚えてるに決まってるのだ。それを書ける脚本家が井上敏樹というのは当たってると思う。


また、当たり前だがTVドラマは多数のスタッフで作られるものであり個々人を叩くことには何の意味もない。たまたま叩きやすい人間が叩かれるだけである。
演出のわかる人間は映像作品をみるとき編集を見るという。こっちの視点から観ることで、たんに叩くだけでなくまた違った作品の見方が出来ることは間違いない。ファイズであれば途中撮影監督のいのくま氏が抜けたことによる映像の変化もわかってくるはずだ。


結局ファイズで井上氏が書きたかったのはキャラクターであり、それが人気が出たのも折り込み済み。またキャラクターに引っ張られる形でグダグダになってしまったのも氏が役者や現場をみて脚本を書いているということだろう。ベルト争奪戦が続くのも自分自身が「ベルトをめぐる物語」と言ってしまっている。
最終回を決めておけといっても実際にキャラクターが動いてみて魅力的だったらそっちに軌道修正するべきだし、それが1年というスパンで出来るならどんな脚本家でもそうするはずだ。短編小説じゃないんだから…。
ある意味批判する側も制作側の想定してる範囲でしか文句を言えていないように感じる。
群像劇のテーマは人間そのものであり、こっちに差し出されてくるものをテーマだと思ってればえらい勘違いだ。子供番組だからそれで良いとすればそれは一つの意見だけど、凡百の子供番組を越えようとする野心を感じない消費されていく作品で終わるまでの話。

これからも常にチャレンジャブルな作風で新作をかいてもらいたいものです。GAも楽しみ。



とまあこの辺まで井上擁護。

これで来週からファイズが観られないとなると寂しいな…。こうして一つの作品に入れ込んで観るというのは久しくない経験。主人公がぶっきらぼうで他人との距離をつかめないというのに共感してしまった以上最後までついていくしかない。

「夢って言うのは呪いと一緒なんだよ」

この作品を通して一番の名セリフはこれだと思う。いままでの人生に後悔のない生き方をしてきた人間ならいざ知らず、たいていの人間はどこかで妥協して人生をすごしてきているはずだ。夢という前向きな言葉に呪いという言葉を重ねあわせるセンスに心底参る。それをコメディリリーフの役割を負ったキャラに言わせるセンス!


もちろんいままでの仮面ライダーのラインを残しつつ、新しいメカニカルなラインを作りだしたデザインセンスとそれを表現する特撮。Black、アギトで極められてたと思われた動植物モチーフの怪人のまったく新しい解釈でみせてくれるオルフェノクの造形も魅力であり、そういうビジュアル的な部分でもファイズは気に入っている作品。


最終回だってあの後いろんな物語を想像すれば良い。教育絵本風に言えば「この後のみんなの暮らしについてお子さまと話し合ってみましょう」だ。差し出されたもので満足してるだけなんてつまらないし、子供のときはそうやって遊んでいたはずだろう?

死んでしまったキャラだって劇場版の世界から呼んできてもいいしSB社の技術で生き返らせても良い。海堂を新しいライダーにして照夫に戻った王と対決させても良い。巧は死ぬかもしれないしそのときにはちゃっかり子供がいるかもしれない。スマートレディは未来からやってきた木場の子孫なんだよ!王に食われた北崎は中から王を食い破って出てくるんだ!ブレイクフォームのカイザはブラスターサイガにリベンジマッチを挑むんだ!

どうしてこんな面白い遊びを終わらせようとするのか…。

一年間ありがとう素敵なファイズ。そしてこれからも!